2024年10月03日

広い範囲を観察しながら、気になるポイントを高精度に測る方法

目次

1.基本的な考え方

2.現行のマイクロスコープで実現させるには

3.松電舎のマイクロスコープでどこまで出来るのか

4.結論

 

番外編:より詳しい考え方

 

 

 

 

 

 

■基本的な考え方

「広い範囲を観察」と「高精度に測定」は基本的には相反することになります。

例えば、弊社の自動校正のマイクロスコープの試験成績書をみると下記のように

なります。

校正証明書

倍率が低い(広い範囲の観察)と精度が悪くなります。

 

これには、バラつき(複数回の測定、人による違い)は含んでおりませんので

実用上はもっと差がでます。

 

 

 

■現行のマイクロスコープで実現させるには

マイクロスコープにはズームレンズがついているので、最低倍率で広い範囲を観察、

気になるポイントがあればズームアップして計測するので実用となります。

校正は、最高倍率側で行い、測定時は必ず、最高倍率にすれば、再現性も取れます。

 

それ以上の場合、高解像度レンズと高解像度カメラを組合わせ、デジタルズームを

加えるとさらに「広い範囲」と「高精度測定」が可能となります。

勿論、限界はあります。

 

 

 

■松電舎の製品で実際にどこまでできるのか

1.実験環境

保証精度と言うわけではありませんが、実際にどの程度できるのか試してみました。

高解像度カメラ(1200万画素カメラ) と 4Kズームレンズで試しました。

4Kマイクロスコープ

 

このマイクロスコープの最低倍率視野が下記となります。

10mmサンプルが2つと空白で水平視野が約28mmになります。

赤部分

左のサンプルは20μmピッチの方眼ですが、この倍率では方眼が全くわかりません。

ズームレンズを最高倍率にすると下記の視野となります。上写真の赤枠部分です。

赤部分

これで 方眼であることはわかりますが、1ピッチ(20μm)を計測できる

レベルではありません。

 

2.実測

今回、ハイビジョンモニタの解像度が200万画素、カメラの解像度が1200万画素です。

ソフトウエアには、下記モードがあります。

(1)カメラの映像をモニタ解像度にあわせて全表示するモード(自動)

(2)カメラの解像度をそのままモニタに表示するモード(100%)

設定を(2)にするとさらに表示画像が拡大されます。

拡大

 

拡大2

これであれば1ピッチ(20μm)が計測できます。

実際に9カ所を測定してみました。

測定

測定結果

平均すると 19.60μmとなります。方眼は20μmピッチなので 

これは校正時の誤差と思われます。

校正時の誤差は人によりますが、この倍率で±1μmはあると考えます。

標準偏差をとり、3σを算出すると1.62となります。

つまり、バらつきが ±1.62μm となります。

 

 

 

■結論

今回、ガラススケールという条件のいいサンプルで確認しました。

校正の誤差が±1μm 測定時のばらつきが±1.62μm となりました。

ザックリで考えると測定精度は ±3μm程度と考えます。

 

1本のレンズでは、水平視野 28mmを確保しながら、高倍率時には

20μmの対象物を±3μm程度で測定可能ということになります。

 

実際のサンプルはエッジにC面やR面があり、凹凸もあるので、条件は悪く

なる場合が多いと思います。

マイクロスコープは測定機ではないので今回の結果は保証精度でなく、

あくまで目安とお考えください。

 

 

 

 

番外編:より詳しい考え方

「広い範囲を観察」と「高精度に測定」という2つの目標は、技術的に対立する要素があるため、

同時に達成することが難しいとされています。

この相反する関係について、より詳しく掘り下げて説明します。

 

1. 広い範囲の観察と高精度測定の関係性

通常、広い範囲を観察するためには低倍率のレンズを使用する必要がありますが、

この低倍率が測定精度に影響を与えます。

低倍率の場合、視野は広がりますが、細部のディテールや微小な構造は見えにくくなり、

その結果として測定精度が下がります。

反対に、高倍率のレンズを使用すると、観察できる範囲は狭くなりますが、

細かな部分を高精度に測定することが可能です。

 

例えば、マイクロスコープで観察する場合、低倍率では広範囲の視野を得られますが、

微小な測定は難しくなります。

高倍率では非常に小さな部分を精度高く測定できますが、その場合視野が限定され、

観察できる範囲が狭くなってしまいます。このトレードオフは、精密な計測を行う際の重要な課題です。

 

2. 測定精度のバラつきの原因

測定において、精度を左右する要因は複数あります。

機器の性能以外にも、測定者のスキルや環境条件によって結果にばらつきが生じます。

 

a. 機器のバラつき

同じ機器を使ったとしても、測定環境や操作のわずかな違いによって結果にばらつきが出ることがあります。

例えば、マイクロスコープのレンズやカメラの解像度、光源の明るさなどが、

微細な変動を引き起こすことがあります。

また、校正の状態が不十分であった場合、測定結果がズレてしまうことがあります。

 

b. 測定者のバラつき

複数回測定を行った場合でも、測定者による違いが結果に影響する可能性があります。

たとえば、レンズの焦点を合わせる際の微妙な差異や、測定位置のわずかなズレが、

精度のばらつきを引き起こします。

人間の目や手の感覚に依存する部分があると、機械的な誤差だけでなく、

人為的な誤差も加わるため、結果に差が生じやすくなります。

 

c. 環境条件の影響

温度、湿度、振動などの環境要因も、測定精度に影響を及ぼします。

特に精密測定を行う場合、これらの環境要因が微小な変動を引き起こし、

結果として測定値がばらつくことがあります。

例えば、温度の上昇により、材料が膨張して測定結果に影響を与えることがあります。

また、振動が測定中の機器やサンプルに伝わることで、結果が安定しないこともあります。

 

3. 精度を上げるための対策

広い範囲を観察しながらも精度を上げるためには、以下のような技術や工夫が必要です。

 

a. ズームレンズの活用

ズームレンズを用いることで、低倍率で広い範囲を観察し、

必要なポイントに焦点を合わせて高倍率で測定することが可能になります。

例えば、最低倍率で全体を確認し、気になる部分をズームアップして詳細を観察するという手法です。

この方法であれば、広い範囲と高精度測定の両方を一定のレベルで両立させることができます。

 

b. デジタル技術の応用

デジタルズームや高解像度カメラの組み合わせにより、物理的なズームだけでなく、

デジタル的に視野を拡大しつつ高精度な測定を行うことが可能です。

デジタルズームは、倍率を上げる際に解像度を保持しながら観察できるため、

視野が広がっても精度を保つことができます。

 

c. 自動校正の導入

手動での校正はどうしても人為的な誤差を含む可能性があるため、

自動校正を行うことで測定の再現性が向上します。

特に、精度が要求される環境では、

自動化されたシステムによって人為的な誤差を最小限に抑えることが可能です。

 

4. 実用的な影響と結論

これまで述べたように、広範囲の観察と高精度測定の両立は難しいものの、

技術的な工夫によってある程度のバランスを取ることが可能です。

具体的には、広い範囲を観察するために低倍率を使用し、

気になるポイントを高倍率でズームアップして測定することで、

精度を維持しながら効率的な観察と測定を実現できます。

 

しかし、機器の限界や使用環境によって、測定結果に多少のばらつきが生じることを考慮する必要があります。

そのため、広範囲と高精度測定を同時に実現する場合には、

使用する機器や技術の特性を理解し、適切な手法を選択することが重要です。

また、測定者のスキルや環境条件にも配慮し、バラつきを最小限に抑える工夫が求められます。

 

このように、「広い範囲の観察」と「高精度測定」は、相反する要素であるものの、

適切な技術とアプローチによって実用的なレベルで両立させることが可能です。

特に、ズームレンズやデジタル技術の活用、自動校正などがその鍵となります。

 

松電舎テクニカルサポートデスク

 

 

 

お問い合わせはこちらから

この記事のおすすめの製品