2024年09月09日

対物レンズのグレードについて

対物レンズは、光学顕微鏡で重要な役割を果たす部品であり、観察される試料の解像度や明瞭さに大きく影響します。
対物レンズのグレードやタイプは、光学補正の程度に基づいて異なります。

 

また対物レンズはその性能や補正能力に応じて、さまざまな観察シーンや用途で使い分けられます。
以下は、アクロマート、セミアポクロマート、アポクロマートの対物レンズがそれぞれどのような場面で使用されるかについての詳細な説明です。

対物レンズのグレード

 

目次

1. アクロマート対物レンズ(Achromatic)

2. セミアポクロマート対物レンズ(Semi-Apochromatic)

3. アポクロマート対物レンズ (Apochromatic)

4. まとめ

 

 

 

1. アクロマート対物レンズ(Achromatic)

アクロマート対物レンズは、青色光(486nm)と赤色光(656nm)の2つの波長で色収差を補正します。焦点面の平坦性もある程度保たれていますが、色収差や球面収差の補正は限定的です。

このクラスのレンズは基本的な観察に適しています。

 

●HI PLAN

これは平坦性を持つアクロマートレンズで、視野全体にわたって解像度を維持するタイプです。

比較的低コストながら、標本全体の平坦で明瞭な観察を可能にします。

 

●用途

主に教育現場や日常のルーチン作業に使用されます。基礎的な細胞観察や組織サンプルの簡易な観察に向いています。

●場面

医療機関や教育機関で、学生や技師が使用する場合。また、標本全体を簡単に確認する際にも使われます。

 

 

●N PLAN

HI PLANと似た性能を持ちますが、より高い解像度と視野の平坦性を提供します。色収差の補正もアクロマートの中では比較的優れています。

 

●用途

より精度が求められる実務的な場面で、例えば病理組織学的な観察や検査業務で用いられます。比較的高倍率での観察も可能です。

●場面

日常的な検査業務や、診断のための細胞や組織の確認。

 

 

●FL PLAN

色収差の補正がHI PLANやN PLANよりも優れており、より精細でクリアな像を得ることができます。

 

●用途

色収差を抑えた、より詳細な観察が必要な場面で使われます。蛍光顕微鏡観察にも対応可能で、基本的な蛍光標識を使用する生物学研究に役立ちます。

●場面

細胞培養の観察や、染色した試料の確認作業。

 

 

 

2. セミアポクロマート対物レンズ(Semi-Apochromatic)

セミアポクロマートレンズは、青色、緑色、赤色の3つの波長で色収差を補正します。

アポクロマートほど完全な補正は行いませんが、アクロマートよりも色収差や球面収差の補正が優れています。

高倍率での観察に適しており、より正確な画像を必要とする場合に使用されます。

 

●PL FLUOTAR

色収差の補正に優れており、特に蛍光観察に適しています。

PL FLUOTARレンズは、より高い解像度と視野の平坦性を提供します。

 

●用途

蛍光観察に最適で、細胞内構造の蛍光染色や生体サンプルの高解像度観察に使われます。

特に蛍光標識を用いた分子生物学的な研究で重要です。

●場面

蛍光顕微鏡を用いた研究、蛍光標識タンパク質を使った細胞の動態観察など。

生物学や医学研究に頻繁に用いられます。

 

 

●PL S-APO

さらに高度な色収差補正を持つセミアポクロマート対物レンズで、正確な色再現が求められる用途に適しています。

蛍光観察や高解像度の生物学的研究に有用です。

 

●用途

色収差を抑えた、より詳細な観察が必要な場面で使われます。

蛍光顕微鏡観察にも対応可能で、基本的な蛍光標識を使用する生物学研究に役立ちます。

●場面

細胞培養の観察や、染色した試料の確認作業。

 

 

 

3. アポクロマート対物レンズ (Apochromatic)

アポクロマートレンズは、青色、緑色、赤色の3つの波長に加えて、紫外線域も含む4つの波長で色収差を補正します。

これにより、極めて高い解像度と色収差のないクリアな画像が得られます。

球面収差の補正も最も優れており、非常に高倍率の観察においても正確な像を提供します。

 

●PL APO

最高級のアポクロマート対物レンズで、色収差や球面収差がほぼ完全に補正されています。

これにより、極めて高精度な観察が可能で、研究用の顕微鏡で使用されます。

 

●用途

 最高精度の観察を要求される研究や診断に使用されます。

細胞の詳細な構造解析、超解像度顕微鏡、精密な3D画像取得などが可能です。

●場面

超解像度顕微鏡や、生体サンプルの詳細な解析。

分子生物学や神経科学、材料科学などの研究で、最も厳密な観察が求められる場合に使用されます。

 

 

 

 まとめ

1. アクロマート対物レンズ(Achromatic)

基本的な観察や教育現場、標準的な検査用途に使用。

 

2. セミアポクロマート対物レンズ(Semi-Apochromatic)

より精密な観察が求められる研究や蛍光観察に適用。

 

3. アポクロマート対物レンズ (Apochromatic)

最高精度の研究や精密な観察が必要な場面に最適。

 

使用するシーンや要求される精度に応じて、これらのレンズが使い分けられます。

 

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